今ではスーパーなどのお菓子コーナーにちょろっと売られている駄菓子ですが、昔は駄菓子屋さんという、いわば子供相手のお菓子屋さんが町にはあったのです。
「最近じゃ昔の様な駄菓子屋は見なくなりましたよね〜」と、
先日も利用者さん達と話していたところです。
映画「三丁目の夕日」では吉岡秀隆さんが駄菓子屋を営むお兄さんを演じてました。
映画自体は良かったのですが、どうも僕のイメージする駄菓子屋とは違った印象も受けました。
映画の駄菓子屋はとにかく店のお兄さんが優しい!
確かに優しいおばちゃんがやっているような駄菓子屋がほとんどでしたが、
中にはとんでもないお店もありまして…
そこは神社の前にあるSという名の駄菓子屋。
四畳半位の土間(床が土の地面)のお店で、その奥に一段高くなった、これまた四畳半位の座敷があり、ごま塩坊主頭のオヤジはいつもそこでもくもくと投網を編んでました。
多分それも仕事だったのでしょう。
とにかくそのオヤジに愛想なんてものはまるで無く、投網を編んでいると店にも出ないので子供の方から
「これ下さい」、と商品を見せ、
オヤジにお金を見せるように、間違いなく箱の中に入れるというシステムでした。
オヤジはチラ見するだけです。
とはいえ機嫌が良い時は店の外で子供達と話す姿もありましたし、親子連れには親の手前を気にしてか優しい雰囲気でした。
その辺りの気まぐれな大人の顔色なんかは当時の子供達は理解していましたよね。
そんなある日。
クラスの友達が
「おい昨日Sに行ったらさ、Sのオヤジがカマで鶏をコロしちゃったで!」
と言うのです。
どこかから店の土間に逃げて来た鶏をさっと捕まえてカマであっという間に仕留めてしまった、
と言うのです。
僕らはその日Sに行き、その友達から現場検証のような形で説明を受けました。
「ここに鶏が入って来て、ここでオジサンが捕まえて、あっちに持って行って…」
なんて話を店の中でしているのに当人は相変わらず「だからどうした」と言わんばかりの顔で投網を編んでいるのです。
誰かが恐る恐る「おじさんそれ本当?」と聞いたら
「そうだよ」
と言ってました。
「普通そうするだろ」って事らしいのです。
まぁうちの親も子供の頃は目の前で父親が鶏をさばいたりしていたらしいですからSのオヤジにしてもその程度の事なのかもしれません。
しかしまさか10円菓子を売ってる駄菓子屋でそんな事が、、
そしてまたある日。
イトコのお兄ちゃんと遊んでいたらSでお菓子を買ってくれる事になり二人で行きました。
店には小1位の男の子達が3~4人居て、クジ選びで盛り上がってました。
「当たりこれじゃね?」
「やっぱり俺こっちにする!」
「これの方が当たりっぽいよ!」
などと実に子供らしく盛り上がっている所へオヤジの一言
「うるせーな〜、
そんな当たりなんかおじさんが全部抜いちゃってるんだから、
どれだって同じだよ!」
そ、そんな!、、なんちゅー事を、、
こんな事子供に言います?!、
堂々と当たりが無い事を宣言する駄菓子屋って、、
そのせいで子供が来なくなった時の売上げとか気にしないのだろうか。
この…子供の夢を打ち砕く超現実の世界。
夢もへったくれもない、
容赦のない駄菓子屋Sの人生論。
そう…
紙切れ一枚めくった程度で手に入る幸福なんてこの世には無いのだ!
人生は自分の力で切り開くしか無いのだ!
…とまぁ、そんなオヤジも僕らの町の愛すべきキャラとして認知されていたものです。
様々な事が寛容に受け入れられていた
「リアル三丁目の夕日」
のお話でした。
KS