夏と言えばホラー
夏の怪談
怖い話が似合いますよね。
そこで、昔読んで怖かった小説を紹介してみたいと思います。
怖いと言っても基準は人それぞれだと思いますので、あくまでも「私の感じる怖さ」となります。
割と怖い映画や本は観てきている方だと思いますので…
好みとしては「表面的に派手な恐怖」より、ぐ〜っと押さえ込んでくる「内面に感じる恐怖」が好きです。
例えば殺人映画で有名な「SAW」というシリーズなんかはバンバン人が死ぬのですが、自分的には殺人運動会の様に感じてしまってぐっと入り込んだ恐怖までとは感じないのです。
「そうやって怖がらせようとしている」と感じてしまうので、残酷なホラーシーンでもカレーライスを食べながら観れてしまうのです。
(↑わざわざカレー食わんでも…)
そういった自分の好みを踏まえた上で…
今回は小説の
を紹介します。
山本周五郎賞、日本ホラー小説大賞を受賞した4編からなるホラー短編集です。
「ぼっけえ、きょうてえ」とは岡山地方の方言で「とても、怖い」という意味だそうです。
岩井志麻子さんって人はテレビでは全身ヒョウ柄のタイツで顔までヒョウ柄に塗るなど、「ちょっとぶっ飛んでて面白い下ネタ好きの女性」ってイメージですが、非常に人間の奥底を見抜いていて、人間社会の暗さや醜穢(しゅうわい)さを理解している人だと思います。
「性善説に則って人間を綺麗に見よう」なんて事はしない。
「人間の汚濁もまるごと受け入れています…」
そんな愛の大きさを持っているような人物なのではないかと。。
最初テレビであの姿を見た時、小説を読んでいた僕は
「明るい方に振り切るとあそこまで行くのか…」
と、妙に納得。
それは同時にあの方の持つ闇の深淵の反動を再確認させられた事でもありました。
さて「ぼっけえ、きょうてえ」のお話し。
岡山の遊郭で働く女郎が、その晩の客の男に聞かせる寝物語がこの作品の内容となります。
客の男から「何か寝付くまで話をせえ」と言われた事から始まるこの女の過去の話。
これが…
とてつもなく恐ろしく、
嫌〜な気分にさせられたまま話の深みから抜け出せなくなるのです。
この女郎は貧困の中、想像を超えるような残酷で孤独な人生を送って来ました。
それを当然の経験の様に岡山弁で話すのです。
方言というのは使う事によって会話のニュアンスが軽くなり聞き手を安心させる効果が出ると思うのですが、それが逆に内容の恐ろしさを浮き立たせてくれるのです。
普通にされる方が怖いのですよ、、
例えば、怖い職業の人がニコニコしながら
「お兄ちゃん、ちょっとこっちきんしゃい?」
と来たら怖いですよね…?、
物語は終始この女郎の一人語りのセリフで進みます。
その内容は…
それは…
どこを切り取ってもエグいのでとてもここでは書けない事に気づきました、、
ネタバレになる…というよりは、今この文をその気もなく読んでいる方を不快な気分にさせてしまうかもしれないので、、
とてもカレーを食える内容ではない!
(↑なんでカレー基準?)
しかしそれでは意味が無いし、興味ある方の為にほんの少し触れようと思います。
例えばこの女性、
村八分に遭っている極貧の家に生まれ、四つの頃から母の仕事の手伝いをするのですが…
「うちのおっ母はな、産婆じゃったんよ。それも間引き専業。
村の者にゃあ、子潰し婆とか呼ばれとった」
「うちらは村八分じゃったけど、その時だきゃぁ呼ばれて行くんよ」
と、四つにして中絶の手伝いをして育つ訳です。そして取り出した赤子は裏の河原…
…か、書けない、、
どうでしょう…
嫌〜な感じがしてきませんか?
薄暗い、
とにかく薄暗い、
ちょっと触れただけでもこんな調子なのでどこを切り取ろうにも書けないのです。
嫌な事だらけのオンパレード!
この女郎ですが、目や鼻が左のこめかみに向けて吊り上がったような顔をしているのです。
その事について話題が及ぶと…
「実はこれは…いや、やめとこう。それを教えたら旦那さんはほんまに寝られんようになる。脅かすわけじゃあないけど、この先ずっとな。」
と、この辺りの事情の怖さ。
後々この理由も明かされるのですが…
知らなきゃよかった、
聞くんじゃなかった、、
もう嫌な事だらけのオンパレード!
(↑さっきからこれで少しでも明るくしようとしてます)
この小説は他の三編も含め、貧困や差別、人間の恐ろしさなどがジト〜っとした、湿気を含んだ古い日本の空気感で描かれています。
環境によって生じてしまった人生。
受け入れなければならない壮絶な恐怖体験。
せめて本人がその事で怯えてくれていれば読み手の心境と一致するので納得が行くのですが、
それを当然の事として受け入れてしまい、当たり前の様にして来られるとこちらの範疇(はんちゅう)を超えてしまってとても怖いのです。
とても、こわい、
気になる方は一読してみて下さい。
[追記]
この文を書いた後でググッてみたところ
三池崇史監督により2006年に映画化されてました。
世界のホラー映画監督13人を集めて作られた『マスターズ・オブ・ホラー』シリーズの中の一つとして、米ケーブルテレビ用に製作されたそうです。
三池崇史のアメリカ映画デビュー作だったようです。
ところが…
放送コードが緩いケーブルテレビにもかかわらず、本作品だけはその内容やシーンがあまりにも残虐なためアメリカでは放送中止になったとの事です。
規制の緩いケーブルテレビで、名だたる監督達によるホラー作品が並ぶ中にあってもこの強さ。。
僕が映像の断片を観たところ原作とはまた違った形で描かれている様子ですが、それでもこの破壊力とは…
ぼっけえきょうてえ、
恐るべし…
KS
最後までご覧いただき有難うございます。
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