あれはまだ3〜4歳の頃、親に連れられて家具屋に行った時のこと。
親と離れて歩いていると店の奥から出て来た家具屋の息子…自分より一つか二つくらい歳上の男の子が現れて誰も見ていないのをいい事に何かを言って来たのか、何かをされたのか、…とにかくその子に苛められて泣かされたのです。
泣きながら親の元に戻ると父親から
「なにやってる!男だったらやり返せ!」
と叱咤され、僕は
「よーっし!」
と奮発して男の子が帰って行った店の奥の通路のような所に入って行きました。
…後々父はこの時の掛け声と、気合いで肩を怒らせて歩き出した背中が可笑しかった、と話してましたが(苦笑)…
しかし結局その男の子は見つからず、
「どっか行っちゃった」
と父に告げました。
些細なエピソードですが、父親は子供がやり合う事によって家具屋の店主と揉めたとしても自分が謝るか、または店主と喧嘩をするのか…
とにかく何かしら子供のケツを拭う覚悟をもって言い渡した訳です。
まぁ当時は今以上に「子供同士の喧嘩なんだし…」と、大人が子供のやる事に過干渉になることは無かったからというのもあります。
小学1~2年生の頃。
近所のイジメっ子とその仲間に自転車を奪われる事がありました。
買って貰ったばかりの補助輪付きの自転車に彼らが跨り一向に返してくれないという…まぁ子供に有り勝ちなちょっとした意地悪ですよね。
僕は涙をにじませて家に帰りましたが、どうしても悔しくなってそのイジメっ子の家に行きました。
ちょうどイジメの大将とその仲間は庭に戻って遊んでいる所で、
「なにしに来た?!」
といった顔でこちらを見ました。
僕は構わず彼等の前を横切って彼のお母さんを呼び付け、出てきたおばさんに
「〇〇君に自転車を取られた!」
と告げました。
「なんだって〜?!コラッ!」
と叱る母に対し彼は
「取ってないよ、まだあそこに置いてあるよ、」
と弁明してましたが
「すぐ取って来なさい!」
と引っ叩いて庭に持って来させました。
…実は彼の家に向かう途中、まだ同じ場所に自転車がある事は見て解っていたのですが、僕はワザと親に言いつけて彼に返させたのです。
無言で見返す彼等の前を、悠々と自転車を押して庭を出ました。
泣きべそかいて家に帰った時に、以前父に打ち込まれた「よーっし!」の精神が発動したのです。
中学の頃。
同学年の不良コンビが僕の部活にやって来て後輩達をプロレスごっこで痛めつけました。
「プロレスごっこ」というのは厄介で、遊びの延長にも取れるような行為なのでやられる側も本気で苦痛や助けを訴えるマネはしないし…
永遠と不良達の飽きるまで技を受け続ける訳です。
周りで見ているこちらも薄ら笑いで「これは遊びなんだ」と、場の空気を演出するような事になるのです。
しかし僕はそんな顔をしたまま後輩達を救ってやれなかった自分が情けなく、悔しくてたまりませんでした。
不良の一人はその後、体育館のステージに座って手にした竹刀をぶらぶらさせていました。
僕は調子を合わせたような挨拶をして彼の隣に並んで座り、何となく体育館で活動する部活を眺めるフリをしながら
「この竹刀がこっちの体に当たれば喧嘩のきっかけになる」
と思っていました。
ちゃんとした喧嘩なんてした事は無かったけれど本気で立ち向かえば何だかやれそうな気がしたのです。
そしてついに竹刀が足に当たったので
「痛ぇッ!」
と声を上げました。
…が、彼は何故か
「あ、ゴメン」
と謝ってしまったのです。
………
え?…
なんで…?
「あぁ?痛ぇって、なんだテメーコラ!」
と来るんじゃないの??
張り詰めた気合いが…
身体中から力が一気に抜けてしまい…
結局は何も起こりませんでしたが、その時の気持ちに沸き起こった静かなる炎のきっかけも「よーっし!」から来るものでした。
その後も幾たびかそのような場面はありました。
今でも…
あの日、父に打ち込まれた「よーっし!」の精神は身体の奥底のどこかに生き続けてくれているのだろう…と思っているのです。
KS
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